世論調査の新しいトレンド − Google Trendsによる予測

政治にしろ、ビジネスの分野にしろ、対象とする人々の選好傾向を予測するのは重大な関心事です。政治の世界では世論調査が頻繁に行われ、ビジネスでは市場調査に大きな予算をかけています。
世論調査では、ギャラップ調査に代表されるような標本抽出による統計的調査手法を目に多いと思います。歴史有る手法ですのでまだ発展の余地は有るにしろ確立された手法です。ただこの手法、調査部分に手間(=コスト)がかかるのが問題で、頻繁に実施するのは困難です。電話調査とかネット投票とかコストをかけないやり方もありますが、そうするとデータの質に問題を抱えてしまいます。
そこでうまれたのが「「みんなの意見」は案外正しい」でも紹介されている集合知による予測市場です。ケインズ美人投票の例で説明したように、他人の行動を予測して自分の行動を決めるという市場メカニズムを利用して、バイアスの問題を回避しようとする手法で、NewsFuturesIowa Electronic Marketsなどが有名です。ネットを利用することで、最大の問題である調査コストの問題を解決しています。実際伝統的な調査手法より的確な予測を行ったとうことで一躍脚光を浴びました。ただこれも、参加者の数が少ないと市場メカニズムがうまく機能しないという問題を抱えていて、人々の関心が高いテーマでしか実用的ではありません。
そのような中、Google Trendsを使う手法を試行してみたという記事がTechCrunchに載っているのを見つけました。
TechCrunch Japanese » Google Trendsで大統領選を占うと?
要点は次のような考え方に基づいています:


Googleオバマ候補が検索される数がマケイン候補が検索される数より多かったら、オバマ候補が選挙で勝つ見込みが高いといえるだろうか?
アメリカの有権者が皆んなGoogleを利用しているわけではないし、それを言うならインターネットだって全員が使っているわけではない。しかしこれだけ大勢がGoogleを使っている以上、そこでの検索パターンは候補者やプレスを始め、選挙結果に関心のあるもの全員が無視できないものとなっている。幸い、GoogleGoogle Trendsで検索キーワードの相対的な人気を一般に公開している。上のスクリーンショットアメリカ国内の過去12ヶ月におけるオバマとマケインのGoogle Trendsによる比較だ。もし検索件数が選挙結果を占うのに役立つものなら、今日選挙があれば、オバマ候補が勝つことになる。
この記事は、バージニア大学の学生、Michael Giuffridaの研究に基づいているようですね。
Attempt to Predict Primary/Caucus Results using Google Trends
サーチ件数の多さが投票行動とどう関連するかはまだリサーチする必要がありますが、標本調査、予測市場、検索トレンド、この3つの手法による予測結果の比較調査は面白そうなテーマですね。TechCruchに記事が出て注目を集めた以上、米国の専門家が比較調査結果を出してきそうですが。