温度ってそうゆうことか

前に書いたことあるかもしれませんが、大学時代熱力学の授業は苦痛でした。なぜそう考えるのか納得できないまま、式や量が出てくるからです。エントロピーは良いとして、エンタルピーや自由エネルギーってなぜ必要なのとか。統計力学になってようやく少しは納得できることも出てきたのですが。日本の教科書って、なぜそう考えるのか説明がないまま、定義とかが与えられ続ける傾向があるので、納得できないところ読み返しても、やっぱり納得いかないんですよね。そのような問題意識を持った物理学者の人もいるようで、その辺に配慮した教科書も出てきているようですけど。
さて、私のように熱力学の基本法則に納得いかないという人にぴったりなのが、「万物を駆動する四つの法則―科学の基本、熱力学を究める」です。著者の物理化学の教科書には昔お世話になったような。それで手にとってみたんですよね。

万物を駆動する四つの法則―科学の基本、熱力学を究める

万物を駆動する四つの法則―科学の基本、熱力学を究める

熱力学の基本法則について第0法則から第3法則までを、各法則のなぜについて丁寧に説明しています。その中でも一番面白かったのは第1章の「第0法則 温度の概念」です。温度の単位としてセルシウス(摂氏) ℃、ファーレンハイト(華氏) F、ケルヴィン Kが用いられていますが、本来ならボルツマン分布のβ(wikipedia:en:Thermodynamic beta)が採用されるべきだったと延々説明しているんですよね。
「第2法則 エントロピーは増大する」の中の注釈では、以下のようにまで述べています。

先見性のある人間が、温度の自然な尺度としてβを選んでいたら、クラウジウスの式は「エントロピーの変化 = βq可逆」(q可逆は可逆的に与えられた熱)、ボルツマンの式はS = log Wと書かれ、エントロピーは無単位だったはずだ。失われた単純さを思うと、涙するしかない。

著者の熱力学に対する考え方が至る所に表れていて、なかなか面白く読むことができました。