不完全な知識のなかで、どのように最善を尽くすのか

生命科学では日々新たな発見が報告されています。そのことを裏返すと我々人間はまだ生命について知らないことが多すぎるということです。薬害、医療事故に合われた方は本当にお気の毒でありますが、そのような限界の中で医療活動がおこなわれている以上、完全に防ぐことは不可能です。それだからこそ、薬害訴訟のニュースを見るにつけ、被害に遭われた方にはもっと公的なサポートを提供すべきであると思っています。
エビデンス主義―統計数値から常識のウソを見抜く (角川SSC新書)」は、最近注目されるようになったEBM(wikipedia:en:Evidence-based medicine)を中心に、不完全な知識の中でデータに基づいて適切な判断をおこなおうと主張するものです。

エビデンス主義自体には賛成ですけど、実施しようとするとデータ集めがなあ…とか私なんかは思ってしまいましたが。米国では医療保険の支払いを少なくするために、保険会社が積極的に支援してくれているために、現実に使えるものになったようですが、日本だとただでさえ財政が厳しい健保連とかが後援してくれるでしょうか。ブログ界では経済論議もよく見かけますが、工学系の方はデータ収集の労力、コストを低く見すぎている傾向を感じています。「帝王の殻 (ハヤカワ文庫JA)」のPABみたいなものが現実化すれば容易になりますが、自己の状態、行動を逐次記録され集計される世界を望む人はほとんどいないでしょ(苦笑)。
帝王の殻 (ハヤカワ文庫JA)

帝王の殻 (ハヤカワ文庫JA)

最近、経済学でも工学メタファーから医学メタファーに人気が移っているようですが、医学には唯一絶対の正解なんかないなかでなにをなすべきかというところを見てもらいたいと思います。