規範的思考と実証的思考

前のエントリーで取り上げた本ですが、ちょっとプロパガンダ臭が強いというのは確かかな。yutakashinoさんが

すべての統計手法には限界がある。その限界を示しながら控えめに成功例を提示するのが、学者としての嗜みだと思うのだが、その適用限界の提示があまりに控えめかつ少なすぎて、"Super Crunching"やればすぐに解決さ!ってな話題が多すぎだ。そんなことあり得ない。ちょっと宣伝臭がしすぎ。

と批判していますが、この本で取り上げた手法ですべての問題が解決すると思われては逆に困惑してしまいます。実際それで予測するのは無理ですよと言った経験私にもありますし。そのように統計、データマイニングなどの手法を紹介する本として見た場合は批判されてしかるべき点もあるとは思いますが、本書の場合は実証的思考の重要性をとくに意志決定者に対して主張するのがメインでちょっと宣伝臭が強くなってしまったのかも。
本書の著者は、何かと議論を呼びがち(?)な法と経済を専門としていますが、社会を扱う分野では「こうあるべきだ(目標)」、そのためには「こうするべきだ(手段)」という規範的な思考が支配的です。目標を決めるのは規範的になるのは当然ですが、手段を選択する場面においても有効性について十分な検討がなされないまま規範的ににっていないか、それよりもデータに基づいて実証的に手段を選択した方が有効であるというのが本書の主張かな。データに基づいて実証的に判断した方が、より本来目指していた目標に到達できますよということが、趣味の分野から始まって、経営、政治、司法、教育、医療の分野について紹介されています。
本書の内容的にはジャーナリストが書きそうなものですけど、専門家自信が書いているのって、やはり研究資金獲得のための宣伝活動なのかな。最近日本でも科学啓蒙書の重要性が認識されてきましたけど、米国の場合は世間の注目を集めて研究資金を集めるために、専門家自身が積極的に啓蒙書とかを執筆するらしいと言われているからなあ。日本だと竹内薫さんががんばっているけど、その活動に対する評価は十分認識されているとはいえないみたい。